禁断の多数決

禁断の多数決『禁断の予告編』買ってきた。全編夢の中をさまよってるみたいな、文字通りドリーム・ポップというか白日夢感ありまくり。特に数曲で歌ってる女子のあまりに無垢な声が、演じてるとかじゃなくてほんとに無垢と思わせちゃうところがすごい。特に目新しいことをやってるわけでもないのにかなり新鮮。実像が不明瞭だからおもしろい感じは確実にあって、ずっと謎のままであってほしいと思ったりもする。

生ペインティングのジャケにビックリしたけど、中に入ってるお子様ランチ的な旗とか輪ゴムとかの意味なしオマケの脱力ぶりがまたいい感じ。予告編なのにほとんどフル・アルバムっていう収まりの悪さも良し。

ボアダムス

品川ステラボール。ドラマー5人、ギター/ベース・オーケストラ16人で、打楽器が減ったぶんオーケストラを音圧とかドローンとかで効果絶大。編成は去年の京都に近いが、やってることは去年のO-EASTを発展させた感じで、あんまムズカシイ方へ行きすぎず、多様なリズムのダンス的方向性が強かったというか。キメキメにせず適度なテキトー感があるのもらしくてよかった。

にしてもヴィジョクリ→スーパーアー→スーパーゴーの3連発はちょっとすさまじくて、久々に意識ブッ飛んで頭の中真っ白になった。この感じこそボアですよ。EYEのテンションもめちゃくちゃ高くてダイヴまでしたけど、だから骨折しちゃったのか…。今や年に1度のボアの日みたいな感じになってきたから、グッズも久々なぶんたんまり買って至福感ありまくり。

Shinji Masuko and Floating Guitar Borchestra of Boredoms

新代田Fever。ギター9人ベース3人全部で12人、たぶん今のボアのギター/ベース隊ほぼそのまま。ドラムも打ち込みもない撥弦楽器のみのアンサンブルで、ボアっぽいドッシャーン風もありつつ、全体としてはジャーマン風のサイケデリックなアンビエントって感じ。

ギターをSEっぽく使うあたり、実験音楽的というかゲッチング的だったりして、やっぱ機材フェチの増子らしい感じがしたかも。なんかボアに対して「俺ならこうやる」とかっていうんじゃなくて、一度こういう編成で好きなようにやってみたかった、みたいな感じがして、あんまコンセプト云々じゃなくて衝動的っていうか。そういうのもこの人らしいのかも。特にラストの全員でのドローン合奏は、異様なイキモノがじわじわ巨大化していくみたいですごかった。

mmm

7th Floorでレコ発。6人のバンド編成だったけど、楽器が歌をどう生かすかとかって考え方じゃなくて、各楽器の即興性の強いプレイと歌とが同等に鳴ってる、みたいな成り立ち。ポップス的というよりジャズ的というか。それで結果的には歌が一番際立ってる、っていうのがおもしろかった。だから弾き語りに音を足すっていうんじゃなくて、まったく別モノというか。よくある、弾き語りの人がバンドでやるとかえって窮屈になったりフツーっぽくなったりする、っていうのがまったくなくて、やっぱジャズ的な自由さをもった人なんだと思った。

そういうのが可能なのも声の強さがあるからで、やっぱあの憂いやけだるさを含んだふくよかな歌声っていうのは、今の女性シンガーの中でも無二なんじゃないですかね。どうしても色気がこぼれてしまう、みたいな感じもグッとくるし。前作のレコ発より格段に良かった気がする。

のっぽのグーニー

7th Floor。熱血青春風とか叙情風とかラップとか、あるいはエクスペリメンタルなのとか、やってることすべての着地点が微妙にズレてて、そのツボを外してくる感じがたまらなく快感だった。そういうズレ具合というかハズシ方がすごく今っぽいと思った。

あのニターリとした濃ゆい笑顔とかオールバックの髪型とか、よくわかんない派手なアクションとか、そういうの全部でKY的な“イヤ〜なキャラ”を演じているような。そこからくる絶妙な後味の悪さにゾクゾクする感じ。だから田中淳一郎という人は、キャラ設定をして芸としてこれをやってるのか、大マジメな表現なのか、引き出しのひとつに過ぎないのか、どうも今ひとつ判別がつかないところがおもしろい。見るたびに謎が深まる、というところでは倉地久美夫山本精一に通じるのかも。このへんの「異才系」のテン年代型といえるのかも。

それとバンドも、あのアルバムを生演奏でやる、というところで、最良の人選と最良のアプローチだったんじゃないですか。キモはやっぱ山本達久。こういう方向性でハマるドラマーはこの人しかいないでしょう。

あと木下美紗都、ピアノ弾き語りで倍音ヴォイスがより強調されてて、MCほとんどなしツンデレ感5割増しって感じで激萌え。スッゲー良かった。

倉地久美夫

スーパーデラックス。本人ずいぶんテンションが高く、そのぶん歌の色気がいつもより増していたような。ヌメッとした艶というか妖気というか。菊地成孔も珍しくエキセントリックな音を出したりして、倉地の世界に2人が引き込まれていくみたいな構図がおもしろかった。それに、あの倉地のいびつなリズム感に呼応できるのは、やっぱ外山明しかいないでしょう。この3人のマジックみたいな吸引力がビンビン出ていて、すごく特別な時間だった。こんなにもっとやって欲しい、終わらないで欲しいと思ったライヴも珍しかった。あと2時間でも3時間でも全然オッケーだった。

大友良英サウンドトラックス

新宿ピットイン。ピットインの大友系ライヴでこんなに華やかだったのは初めてじゃないだろうか。顔ぶれも雰囲気も。特に後半、大友自身の解説を交えながらどんどん曲をやっていくのがもう至福って感じで、それが次第にディープになっていって、阿部芙蓉美の「その街のこども」でピークに達する、というような流れがお見事だった。

阿部芙蓉美の声は、ソロよりも大友とやった時の方が断然いいと思うのだが。なにかが宿るっていうか化学反応というか。あと七尾旅人のインプロヴァイザーとしての才能はやっぱりすごい。