想い出波止場

渋谷O-West。6月のツアーで想い出波止場はしばらく休み、っていわれていたのに、どうしてこんなに早くまたやることになったのか、そのへんの事情はよく知らないんですが。6月のアースドムは見られない人がいっぱいいて非難囂々だったらしいから、広い会場でアンコール公演みたいなことなんですかね。

ライヴはまあ想い出の要素をひととおりやったみたいな感じで、アースドムの時にはいなかったケン・スギサキも登場して、変化にも富んでいたと思うんですが。しかしどうも終始ストイックというか淡々としてるんですね。アースドムのアッパーなお祭り感とはえらい違いで、アースドムが“ハレ”だとすると今回は“ケ”という感じ。そう思えばまあこんなもんなのかな、とか思って見ていたんですが。

しかしアンコールのラストにやった、ジャーマン・ロックっぽいミニマルな長尺インストがねえ、あまりにユルすぎたんですよね。演奏そのものはそんなに悪くないんだけど、なんの変化もなく延々30分以上にわたってダラダラとやってて、これは相当ダレましたねえ。山本さんが途中でギター弾かなくなったり、かと思うといきなり轟音かき鳴らしたりしてて、そういうのもネガティヴな思わせぶり的に感じられてしまって、楽しめなかったです。98年に同じ会場で同じようなジャーマンっぽい長尺曲をやった時には、自分の音楽観が根底から変わるくらい衝撃を受けたんですが、それとは雲泥の差くらいに思えてしまったんですよね。

想い出というのは「ハズす」とか「裏切る」とかっていうのがひとつのありようみたくなっているから、今回みたいなのも「山本さんってそういうもんじゃろ」的なところに収まりがちなんですが、それと「弛緩してる」ってこととは別物だと思うんですよね。あるいは「ハズし方」がこれまでとは違うポイントに行ってしまったというか。おれはそう感じてしまったんですよ。そういう「ズレ」が、演奏が進むにつれてどんどん広がってしまった、というライヴだったと思いますね。

あと気になったのが、山本さん以外のメンバーがずいぶんと寡黙だったところで、6月の時はめちゃくちゃバンド感あったから、今回は山本さんの色ばかりが出すぎていたような気がします。津山なんかあんなに元気だったのに、終始おとなしかったし。そういうモロモロを総合すると、今回はほんとにやりたくてやったものなのかなあ、とも思えてくるんですが。最後に山本さんが「またしばらくやらないかも、もしかしたらもうないかも」みたいなことを言っていましたけど、これがラストになるんなら、アースドムがラストの方がまだ良かったと思いますね。