1Q84

(以下ネタバレありますので)こないだようやく読み終わりました。村上春樹の新作なんて今やオリンピックみたいなもんですから、一気に読んじゃもったいないから少しずつ読んでいって、でも早く続きが読みたいからついつい読んじゃうみたいな感じで、とにかく堪能しましたねえ。

で、すでに言われてることなんでしょうけど、これは続きがあるんでしょうね。『ねじまき鳥クロニクル』のパターンってことなんでしょう。まあ、これで完結と言われればそう受け取れなくもないけど、最後に<book2終わり>となっていたこととか、上下ではなく1・2にしたこととか、あとなにより話自体に続く余地がいっぱいあるってことで、続きがあると捉えた方が自然という気がします。

話自体は例の「壁と卵」の話そのまんまといいますか、あーなるほどって感じ。主題は宗教を含めた心の闇というかトラウマ、って感じでしょうか。ただ話の進め方がサスペンス的というか、「衝撃の事実発覚!」的なビックリさせようというあざとさが多々あって、つまりはストーリー自体に寄りかかりすぎてて、やや違和感があったりしたんですが。この人らしくないっていうか。それでもそのストーリーがめちゃくちゃおもしろくて、なんか否応なしに引っ張られていきましたねえ。それに2巻の後半以降は観念的なものになっていったから、最終的にはうまくバランスが取れていたと思います。

なによりも、2つの話が少しずつ近づいていく話の展開のテクニックは素晴らしくうまくて、見事というしかないですね。ここまで綿密に計算され尽くした展開というのは、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』以来じゃないでしょうか。

ちなみにおれの村上春樹ベスト3は、1位『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、2位『ダンス・ダンス・ダンス』、3位『羊をめぐる冒険』で、『1Q84』は今のところそれら以上ではないんですが、続き次第ではもっと上になるかもしれないです。少なくとも90年代以降ではダントツで一番だと思うし、完成度の高さというところだけでは全作品中でも一番でしょう。なんか最後の底力というか執念というか、そういうものを感じますね。集大成っぽいとも思うし。

余談ですが、1984年というのはおれが村上春樹の小説を初めて読んだ年で、個人的にはそういう意味も含めて感慨深い作品ですね。ともあれこんなに手ごたえのある小説を読んだのは、ずいぶん久しぶりな気がします。