ヤン富田

日本科学未来館のでっかい地球儀の下でやるという特殊なライヴだったんですが、音楽と地球儀の関連性はさほどなかったという印象。その地球儀が醸し出す幻想的ムードはかなり心地よかったんですが、やっぱ主役はあくまでも音楽でしたねえ。

前半に「被験者(なんかスタッフの人)の脳波をメロディーに変換して演奏する」とか「自分の脈拍をビートに置き換える」とかっていう「実験」をいろいろやってて、これがめちゃくちゃおもしろかったです。本人が事細かに説明しながら実演してみせてて、いやーこんなことやる人、他にほとんどいないでしょう。絵的にアトムの一場面みたいで、ヤン富田もお茶の水博士か天馬博士かってフンイキありまくりで、喜々としながら「それではやってみましょう」「うまくいきましたねえ」とか言ってて、演奏っていうより実験なんですよね。やっぱこの人はミュージシャンっていうより、研究者とか博士とか教授とかっていう方がピッタリきますね。そういう部分での方がすごい人だと思うし。

音そのものとしても「脳波の実験」の方なんかボアの『ヴィジョクリ』みたいなトランシーな電子音の嵐で、それがサラウンド的に観客を包み込むように鳴っているというのは、スッゲー気持ちよかったですねえ。純粋な電子音響の気持ちよさというのを、久々に味わった気がします。

ただそこまでは良かったんですが、後半になると高木完とか大野由美子が出てきてドゥーピーズやナイーヴスの曲もやってて、ヤンのライヴではお決まりとはいえこの日はいらなかったんじゃないでしょうか。前半の感じでダラダラ説明→実験を繰り返すだけで全然おもしろかったと思うのに、全部見せようとしてあれこれたくさん入れすぎて収拾つかなくなった、みたいな感じ。だいぶ時間が押してて、終盤はずいぶんとバタバタして締まりのない終わり方だったし。まあそういうのもこの人らしいといえばらしいのかも、なんですが。