Phew×向島ゆり子

渋谷O-West。向島ゆり子のヴァイオリンやピアノに、Phewのエレクトロニクスとヴォーカルっていう編成で、ジャーマン・エレクトロっぽい音の歌もの、って感じ。向島の即興性に富んだ思慮深い演奏の良さもさることながら、なによりPhewのヴォーカルが素晴らしい。呪術的で、凛としていて、濃厚なデカダン臭を放っていて、彼女のここまでディープな歌声を聴いたのは久しぶりな気がします。復帰後のライヴでは一番良かったんじゃないですか。

冒頭のちょっとビックリなカヴァー「時には母のない子のように」からしていきなり圧巻で、極めつけのアーント・サリーの「醒めた火事場で」なんかもう怖いくらいの凄味がありましたねえ。おれはもう泣きましたよ。こういう自由なスタイルでこそ彼女の表現力は生きるんだと思うし、これぞPhewの真骨頂でしょう。おれは彼女の、こういうライヴが見たかったんですよ、ずっと。今ソロ・アルバムをレコーディング中らしいけど、今の彼女はすごくいい状態なんだと思いますね。