最近見た映画

テレビで録画したものがほとんどで、時期外れというか古い映画ばっかりで恐縮ですが…。

●間宮兄弟
 途中で見るのをやめようかと思ったくらいつまんなかったです。一応最後まで見ましたけど。30代独身兄弟のなんでもない日常をおもしろがる映画、ってことだと思うんですが、あざとすぎるっていうか狙いすぎてるんですよ。休日に二人で散歩しながら“チヨコレート”をやるとかねえ、なんじゃそらって感じですよ。それをおもしろがれるならいいんですけど、おれはとてもじゃないけど無理でしたね。二人の妙にキバった演技も全然空回りって気がしたし。あーでも、沢尻エリカって意外にカワイイのねとか、常盤貴子の浴衣チラリは良かったとか、そういう発見はあったんですけど。どうでもいいかそんなこと…。

天然コケッコー
 これは素晴らしかったです。今回の4本の中ではダントツに良かったですね。たいしたことはなにも起こらない日常、というのは『間宮兄弟』と同じですが、こっちはなにも起こらないまま3時間でも4時間でも続いて欲しいって思いましたね。全体にそういう、時間がすごくゆっくり流れて、どこまでも続いていくという感覚があって、それが子供の頃の永遠性というか、終わりなんかないみたいな感じというのを、とてもうまく表していたと思います。レイ・ハラカミのファンタジックな音楽も、そのへんの表現をさらに強めていたと思いますね。
 子供6人の、ほんとにそこで暮らしているかのような無理のない演技も、秀逸と言うしかないです。夏帆がすごくいいのはもちろんなんですが、一番下のサッチャンという女の子が素晴らしすぎる。『誰も知らない』のやっぱり一番下の子を思い出したりしたんですけど、なんというか「子供ってせつない」というのを見事に体現してるといいますか。…それにしても、夏帆夏川結衣が親子ってのはなあ…。イヤ全然不自然じゃないんですけど、これもまたせつないっていうか…。

●実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
 田原総一朗が「若松に屈してはならないと両手を膝の上で握りしめながらやっと見終えた」とかってかっこいいこと書いてましたが、見てみたらほんとそんな感じで、すっごいしんどい映画ですね。もう画面の隅々から重いエネルギーをビシバシ放ってるみたいな感じで、圧倒されました。特に中盤の総括連発のところなんか、山岳ベース内の息苦しい閉塞感というか「逃げられない感」というのがすごく伝わってきて、耐えられないくらいで、おれはヤワなんで一気に見られなかったです。そういう画面の迫力に尽きる映画だと思いますね。
 ハイライトはその総括周辺で、あさま山荘に入ってからは後日談みたいな感じがしたんですけど、ただ終わりの方の「勇気がなかっただけだ」っていうセリフで一気に全部まとまっちゃった、みたいな感じがしましたね。めちゃくちゃわかりやすいセリフだと思うんですけど、でも正当化するんじゃなくて受け入れるってことを示したわけで、一応のケリというかオチがついたという気がします。

それでもボクはやってない
 主人公や被害者の人格とか感情とかっていうのを、ほぼまったく描かないで、裁判とかのコトの流れだけで進んでいったのが良かったですね。そこをテンポ良く見せていったので、自然に引き込まれてしまいました。余計なものをほとんど排除して、裁判のことではこれでもかと見せるっていう、テーマの示し方がすごく鮮明な映画ですね。
 この映画はみなさん演技がうまいと思ったんですが、特に加瀬亮はめちゃくちゃうまいですね。後述する『ありふれた奇跡』もそうですけど、「30歳前後のさして取り柄もないフツーの若者」というのをすっごく自然に演じることができる人だと思いますね。あと裁判官の小日向文世。こういうちょっと憎たらしいというかいやらしい役をやらせると、この人は見事にズッパマリでしょう。だからハイライトといえる、終盤の加瀬対小日向の対決というのは、非常に見ごたえがありました。しかしこの映画は、なんともやりきれないものが残りますね。

●(オマケ)ありふれた奇跡
 これはテレビドラマなんですけど、山田太一ってことで見たらすごくハマったので。これもなんでもない日常がメインで、そこに異物を放り込むことでいろんな関係性がおかしくなったりするっていう、まあ山田太一の常套手段だと思うんですが、やっぱりこういう話のうねりとか進め方っていうのはさすがにうまいですね。最後はいささか強引にまとめちゃった感じがしましたけど。
 このドラマは仲間由紀恵加瀬亮が一応主役なんですが、仲間はどうも存在感が薄くて、それよりまわりの役者の方がイキイキしてる感じがしましたねえ。まあ仲間は「お飾り」みたいなものだったんじゃないですかね。この人の演技って、いかにも「演技してる」って感じがするし、「仲間由紀恵」という記号みたいなものに寄りかかりすぎてると思ったし、加瀬の自然な演技とは全然バランスが取れていなかったと思いますね。
 で、それよりも全然おもしろかったのが加瀬一家で、特に風間杜夫と井川比佐志が最高。風間杜夫なんかねえ、もう捨てるもんなんかない的なイキっぷりのいい演技で、岸部一徳との女装とかも含めて、ほんと痛快でした。ドラマ全体としても、恋愛を軸にしつつ、家族というテーマの方をじっくり描いているように思えたし、山田太一が言いたかったのはそっちの方という気がします。