ボアダムス
京都精華大学木野祭。お祭りスペシャル・ヴァージョンって感じで、スピリチュアルな部分ほぼ皆無の、終始アゲアゲでアッパーなライヴだった。「スーパー・アー」「スーパー・ゴー」「アシッド・ポリス」といった定番曲を、11ギター+4ベース+セヴンナーのバカでかい音の壁とか、6ドラムスの地鳴りの如きドラム・アンサンブルで再解釈した、というような。真っ正面からドーンとくる音圧や、四方からハイハットの波に包まれるような感覚っていうのはやっぱり格別で、これまでのボアとも微妙に違っていた。ちょっと90年代を思わせるようなところもあって、もう最高に気持ちよかったですよ。だから今の方向性云々っていうものではないと思うけど、ここまで祭りとかアッパー・サイドに特化したライヴも珍しいから、ひとつの振り切ったカタチなのかも。
惜しむらくは何度も電源が落ちて流れが寸断されてしまった(セヴンナーを叩くと落ちる)ところだけど、その時にEYEが「(ドラムだけで)練習やろか?」とかって言ったりして、その状況を楽しんでるように思えたのがおもしろかった。いつもの作品っぽいきっちりした流れのライヴじゃなかったから、こういうハプニングで予測不能な感じになるのも、ボアっぽいといえるのかも。EYEは激しいアクションとか意味不明言語連発とか雄叫びとか、久々のダイヴもあったりして絶好調。イキまくりというところでは2月のATPより良かった。ほんとに最高だった。
ジェイムス・ブレイク
リキッドルーム。以前YouTubeで見たライヴの“抜きの美学”的なものかと思っていたら全然違って、ノイズと重低音とグルーヴがうねりまくるエグさ炸裂変態サイケデリック・サウンドって感じ。アルバムをフィジカルな攻撃的アプローチで再解釈したというか発展形というか。
本人の歌声さえもかき消してしまう容赦なしのノイズとか、スペクタクルといえるくらいの縦横無尽なミックスとか、リズムに対する自在な解釈とか、それにあの超立体的なヴォーカルとか、すべてがラジカルなライヴだった。素晴らしすぎる。ダントツで今年のベスト・ライヴ。
穂高亜希子、mmm
8日、三鷹おんがくのじかんで穂高亜希子、mmm。ウチからチャリ3分。穂高亜希子はソロでやった未発表曲?というのが興味深く、むき出しなヒリヒリ感みたいなのが新鮮だった。最後の「嘘」とカヴァー「にんげんっていいな」の両極端の間を揺れているのが彼女の歌、ってことなのかも。あと穂高亜希子は楽器だとギターよりもピアノの方がいいような。感情表現がダイレクトで、指先と右脳とが直結してる、みたいな感じがする。彼女のピアノと吉田悠樹の二胡とのバトルっぽい絡みとか絶品だったし。
それとmmm、ソロはレコ発以来でだいぶ久々に見たけど、やっぱりいいですねえ。あのふくらみのある声とガット・ギターの響きだけで、湿気混じりの艶気が匂い立つみたいな、すっごい濃密な感じというか。他の音とか足さなくても弾き語りで十分すぎる濃い世界がある、というか。
木下美紗都
25日、代官山晴れたら空に豆まいて。彼女のハスキーでふくらみのあるヴォーカルは生だといっそう良くて、低音部で出る倍音とか、高音部の揺らいでる感じとかもう絶妙。それで女山本精一みたいなストイックな風情で、あんなにポップな曲をやる、というアンバランスさがすごくいい。
どうもこの人は場に収まらない、馴染まない感じがあって、音大生とか文学少女がライヴやってるみたいな、違和感みたいなものというか。エレキ・ギターがあんなに似合わない人ってそうはいないと思うけど、その似合わなさがいいっていうか。そういうのが心地よさに転じてるみたいな。
JAZZ ART せんがわ
調布市せんがわ劇場でJAZZ ARTせんがわ。ジョン・ゾーンズ・コブラはやっぱりおもしろいわあー。今回はあんまなじみのない人が多かったけど、見事に役者揃いで、特に坂本弘道と義太夫の田中悠美子が最高。コブラだとミュージシャンの引き出しの多さとかユーモアのセンスとかが、どんどんむき出しになっていく感じがたまらない。そういうのに秀でた人ばかり出てくるって感じがするし。ほんとに何度見ても刺激があるし、来年も見たいです。
それ以外だと今日のベストは坂田明+ジム・オルーク+山本達久+ピカ+高岡大祐。達久とピカのドラム・バトルすごすぎ。特にピカはもはや、当代随一のライヴ・パフォーマーといえるんじゃないですか。あと八木美知依ダブル・トリオも独創的で素晴らしかったです。