休符だらけの音楽装置

大友良英の新作インスタレーションで、秋葉原の近くにある旧中学校の屋上運動場にいろんな展示が置いてあって、それらが無秩序に鳴らされる、というもの。いろんな楽器とか物音とか屋外のノイズとかが入り混じって、弱音だけど雑然とした音響空間ができていて、それは意識の中心をどこに持っていくかによって聞こえ方が全然違ってくるという、大友言うところの「聴取」とか「ノイズ」という考え方をよく表したものだったと思いますね。全員が音楽家ではなくて「ただ音を出す」という人も多かったので、音楽ライヴよりもそういう部分がより明確に出ていたような気がします。

とかなんとかってことより、この日おもしろかったのは会場全体がシュールな空気に満ちていたところ。大友自身がチャリに乗ってそのへん走ってるとか、アーティストは髪とか服とかに風船を付けてるとか、長髪イケメン野生児風アーティスト(名前わかりません)がやおら走り出したりスケボーで会場内ぐるぐる回ってるとか、アーティストはみなさん「あっちに行ってらっしゃる」風なカンジ。展示物もどれもわけわかんないものばかりだし。それがフェリーニとか寺山修司とか『まぼろしの世界』のジャケとかみたいな、シュールで摩訶不思議な空間を作っていたんですよね。特に長髪イケメン野生児氏のイキっぷりの良さは実に痛快で、もうこの日の主役でしょう。

だから自分を含め観客はそういう世界に迷い込んだみたいになるわけですが、観客も「???」でありつつその世界を能動的に楽しんでるって感じで、それが相まって、奇妙でナゴヤカでやんわり心地いいみたいな、なんとも独特のムードだったんですよね。脱日常の快感って感じですかねえ。あんな空気感はなかなか味わえるもんじゃないですよ。おそらくはそれを狙ってやったんだろうから、いやーやっぱり大友恐るべし。あーあと、SachikoMって近くで見るとすっごくキレイで萌え死にしました。どうでもいいかそんなこと…。