のっぽのグーニー
7th Floor。熱血青春風とか叙情風とかラップとか、あるいはエクスペリメンタルなのとか、やってることすべての着地点が微妙にズレてて、そのツボを外してくる感じがたまらなく快感だった。そういうズレ具合というかハズシ方がすごく今っぽいと思った。
あのニターリとした濃ゆい笑顔とかオールバックの髪型とか、よくわかんない派手なアクションとか、そういうの全部でKY的な“イヤ〜なキャラ”を演じているような。そこからくる絶妙な後味の悪さにゾクゾクする感じ。だから田中淳一郎という人は、キャラ設定をして芸としてこれをやってるのか、大マジメな表現なのか、引き出しのひとつに過ぎないのか、どうも今ひとつ判別がつかないところがおもしろい。見るたびに謎が深まる、というところでは倉地久美夫や山本精一に通じるのかも。このへんの「異才系」のテン年代型といえるのかも。
それとバンドも、あのアルバムを生演奏でやる、というところで、最良の人選と最良のアプローチだったんじゃないですか。キモはやっぱ山本達久。こういう方向性でハマるドラマーはこの人しかいないでしょう。
あと木下美紗都、ピアノ弾き語りで倍音ヴォイスがより強調されてて、MCほとんどなしツンデレ感5割増しって感じで激萌え。スッゲー良かった。
豊田道倫&ザーメンズ
渋谷ネスト。豊田道倫はソロを挟んでやったぶんソロとザーメンズの対比がより明瞭になった感じで、バンドは以前より粗暴というかノイジーな音になったような。三輪二郎のギター・ソロがかっちょよくてツボ突きまくり。
最初のどついたるねんは、方向性のよくわかんない着地点なしな感じとか、曲ごとに楽器が変わるとか、全員服装バラバラとか、意味不明混沌パワーって感じで激しくウケた。なにより客席にダイヴ(というかダッシュ)する時のイキっぷりの良さと、下着女の容赦ない壊れっぷりが素晴らしかった。
あと前野健太、ずいぶん久々に見たけどスッゲー良かった。バンドの演奏も歌もなんかスッコーンって突き抜け感があって、ちょっとゾクッときた。旬の人特有の目に見えない力が働いてる感じっていうか。特にラストのギターと二胡のバトルが圧巻だった。
シガー・ロス爆音上映
吉祥寺バウスシアターで、シガー・ロス『インニイ』爆音上映。光と闇のコントラストを強調した、ひとつひとつのカットが1枚の写真みたいなカメラ・ワークが秀逸で、このバンドの美学が漲ってる感じ。なによりテッド・ジャンセンのマスタリングによる音質が素晴らしく、それをほとんど最大限に生かした爆音システムがすさまじい迫力だった。
ボア映画の時なんかも思ったけど、このバウス爆音上映って、少なくとも音楽映画に限って言えば、作品の正確な評価とか判断とかをするには必要な環境って気がする。このシガー・ロスも、違う環境で見たら印象がだいぶ異なると思えるし。