倉地久美夫

南池袋ミュージック・オルグ。前半ソロの後、後半は山本達久+吉田悠樹ジム・オルークとの共演で、菊地外山の時とはまた違うブキミ感とか抽象性とかの高い演奏で見事にハマった感じ。この3人でやった即興セッショもイタコ的和テイストみたいなのがあったから、倉地と世界観が近いというか。倉地もテンション高くてつんのめり気味な歌が最高だった。

セッションのキモは山本達久のシンバルガムテープ引っぺがしワザ。なんかこの人、マイクで叩いたり変な鐘使ったり、以前よりいっそう奇っ怪なプレイになっていたような。あの定型にとらわれない感じが、倉地とも相性がいいように思える。

相対性理論

ゼップ東京。真部西浦不在→やくしまるソロ・ユニット化かと思ったが、そうではなくハードな曲を連発してダイナミックな演奏で、セッション的パートも多くて、生々しいバンド感を前面に出していた感じ。鍵盤とか装飾系楽器がいなかったのもよくわかる。そういうところにやくしまるのこのバンドに対するこだわりが感じられたというか、彼女が“バンドとしての相対性理論”を必死に保持しようとしていた、みたいに思えたかも。

ただそういうバンド感を殊更に強調していたというのが、2人の不在を浮き彫りにした感もあって、なんというか“相対性理論相対性理論を演じている”みたいな感じはあったかも。たぶん仕切り直しというか第2期ってことなんだろうけど、やっぱ以前とは確実に違うバンドになったんじゃないですかね。

宇宙人

赤坂ブリッツ。しのさきあさこは薄笑みを浮かべながら、両手でハートマーク作ったりする手話みたいなポーズを取って歌う、という新ネタ(振付?)があって、不思議感増幅というか異物感ありまくり。ミネラルウォーターをわざわざ紙コップに入れて両手で飲む、というのは以前と同じ。ヴォーカルは声の張りや発声量がグンと上がってたし、演奏はオルタナ的変態性が増していたし、やっぱ全体的に底上げされてる印象。客席に拍手させる間を与えず一気に演奏してさっさと引っ込む、ってのもツンデレ感炸裂って感じで痛快だった。

禁断の多数決

禁断の多数決『禁断の予告編』買ってきた。全編夢の中をさまよってるみたいな、文字通りドリーム・ポップというか白日夢感ありまくり。特に数曲で歌ってる女子のあまりに無垢な声が、演じてるとかじゃなくてほんとに無垢と思わせちゃうところがすごい。特に目新しいことをやってるわけでもないのにかなり新鮮。実像が不明瞭だからおもしろい感じは確実にあって、ずっと謎のままであってほしいと思ったりもする。

生ペインティングのジャケにビックリしたけど、中に入ってるお子様ランチ的な旗とか輪ゴムとかの意味なしオマケの脱力ぶりがまたいい感じ。予告編なのにほとんどフル・アルバムっていう収まりの悪さも良し。

ボアダムス

品川ステラボール。ドラマー5人、ギター/ベース・オーケストラ16人で、打楽器が減ったぶんオーケストラを音圧とかドローンとかで効果絶大。編成は去年の京都に近いが、やってることは去年のO-EASTを発展させた感じで、あんまムズカシイ方へ行きすぎず、多様なリズムのダンス的方向性が強かったというか。キメキメにせず適度なテキトー感があるのもらしくてよかった。

にしてもヴィジョクリ→スーパーアー→スーパーゴーの3連発はちょっとすさまじくて、久々に意識ブッ飛んで頭の中真っ白になった。この感じこそボアですよ。EYEのテンションもめちゃくちゃ高くてダイヴまでしたけど、だから骨折しちゃったのか…。今や年に1度のボアの日みたいな感じになってきたから、グッズも久々なぶんたんまり買って至福感ありまくり。

Shinji Masuko and Floating Guitar Borchestra of Boredoms

新代田Fever。ギター9人ベース3人全部で12人、たぶん今のボアのギター/ベース隊ほぼそのまま。ドラムも打ち込みもない撥弦楽器のみのアンサンブルで、ボアっぽいドッシャーン風もありつつ、全体としてはジャーマン風のサイケデリックなアンビエントって感じ。

ギターをSEっぽく使うあたり、実験音楽的というかゲッチング的だったりして、やっぱ機材フェチの増子らしい感じがしたかも。なんかボアに対して「俺ならこうやる」とかっていうんじゃなくて、一度こういう編成で好きなようにやってみたかった、みたいな感じがして、あんまコンセプト云々じゃなくて衝動的っていうか。そういうのもこの人らしいのかも。特にラストの全員でのドローン合奏は、異様なイキモノがじわじわ巨大化していくみたいですごかった。

mmm

7th Floorでレコ発。6人のバンド編成だったけど、楽器が歌をどう生かすかとかって考え方じゃなくて、各楽器の即興性の強いプレイと歌とが同等に鳴ってる、みたいな成り立ち。ポップス的というよりジャズ的というか。それで結果的には歌が一番際立ってる、っていうのがおもしろかった。だから弾き語りに音を足すっていうんじゃなくて、まったく別モノというか。よくある、弾き語りの人がバンドでやるとかえって窮屈になったりフツーっぽくなったりする、っていうのがまったくなくて、やっぱジャズ的な自由さをもった人なんだと思った。

そういうのが可能なのも声の強さがあるからで、やっぱあの憂いやけだるさを含んだふくよかな歌声っていうのは、今の女性シンガーの中でも無二なんじゃないですかね。どうしても色気がこぼれてしまう、みたいな感じもグッとくるし。前作のレコ発より格段に良かった気がする。